『ティファニーで朝食を』に学ぶモテる女子力の法則

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原作「ティファニーで朝食を」では映画のイメージよりも奔放なヒロイン、ホリー・ゴライトリーが描かれている。その女子力がまた、すごい。時代は変われど、モテる女はこういうことか、と私たちに教えてくれる。そんな古き良き女子力の教科書「ティファニーで朝食を」を読み解きながら、本作の名言と共にズルい女の技を盗んでみよう。

1.しおらしくキュートに、ワガママを言い放つ。

「ごめんなさいね、ダーリン ———鍵を忘れちゃったの」
同じマンションの階下に住んでいるとはいえ、会ったこともない男性に(それが主人公なのだけど)、向かって放った言葉がこちら。時間は午前二時か、三時か、四時あたり、つまり真夜中ということだけれど、なぜか言われた側はそれを受け入れてしまう。もちろん彼女の容姿がかわいらしいこともあるのだけど、その非常識さに備えられたしおらしさがたまらない。

ことだってのは、よくわかっているから。でもなにしろ非常階段はしんしんと冷えるし、あなたはずいぶんあったかそうなひとに見えたから…」

こんな風に言われて真夜中に女の子を外に追い出せる人がいるとしたら、お目にかかりたい(そして心中を聞いてみたい)。可能な限りのワガママさと、それをしおらしく引く構え、その両バランスにかけてホリーはきちんと心得ている。小悪魔め。

I jeszcze raz Audrey - królowa "małej czarnej"

出典:iq.intel.pl/spogladajac-w-najczarniejsza-czern-swiata

2.自分自身を過大評価しない、かつ、見失わない。

「といっても私が宝石にぞっこんだっていうことじゃないのよ。ダイアモンドは好きだわ。でもね、四十歳以下でダイアモンドを身につけるのって野暮だし、四十過ぎたってけっこ危ういのよ。だって、ダイアモンドが似合うのはきっちり年を取った女の人だけなんだもの」

こんなことを(それも、真実を)はっきりと信条として語れる19歳、すばらしすぎてため息がでそう。自分の若さと美貌をフル活用しつつも、自分が分不相応だと感じるものには決して手を出さないホリー。図々しい少女かと思いきや、きちんとした分別を備えている。そういう女性はたいへん魅力的なものです。

「しわがよって、骨張って、白髪で……そういう人にこそダイアモンドは似合うのよ。だから年を取るのが愉しみ」

かつ、自分がダイアモンドの似合う女性に成長していく、きっちり年を取っていけると確信もしているホリー。自分自身を過大評価することなく、価値をしっかりと把握さえしていれば、将来は明るいと教えてくれるのです。天使か。

3.相手が気になる「ひっかかり」が、ある。

恋の始まりは相手に興味を持ち始めたら。そのきっかけを持っていることこそが「モテ」の必須条件です。ホリーはというと、もちろん。

「どうして君は旅行中なの?」「カードに書いてあること?」と彼女は言って、不意を突かれたような顔をした。「それが何か変かしら?」「いや、変ってわけじゃないけど、なんとなく心をそそられるから」

これ!「なんとなく心をそそられるから」、これに勝るものがあるでしょうか。なんとなく、ってもう、無意識の範疇で自分を意識させることに成功しています。相手は無意識にホリーワールドに引き込まれ始めているのです。これはアパートの表札の名前の下に小さく「旅行中(トラベリング)」と書いていただけに過ぎないのですが、サブカル文学系男子である主人公のハートを掴んだ模様。エサはどこにでもはっておくものですね。

ちなみに、表札に書かれたその文字の理由は

「結局のところ、私が明日どこに住んでいるかなんてわかりっこないでしょう。だから住所のかわりに旅行中って印刷させたの」

だそう。小悪魔め。

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出典:mtmtsts.blogspot.jp/2013/08/ray-ban-vintage-wayfarer.html

4.相手の気持ち察知し、それを満たす能力がある。

「お金を払ってもらえないんでしょ。私ならこんな話は断っちまうけどな」と彼女はあくびをしながら言った。しかし僕の表情から、自分が適切ではないことを口にしたと察したようだった。

これは主人公が彼にとっての良い知らせを(実際、ホリーには関係ないのだけれど)意気揚々と知らせにいった際のこと。この直前の描写から、どうやらホリーは寝ていたようだし、いきなりの来訪者を出迎えただけで親切に思えるけれど、自分の率直な感想がどうやら相手が受け入れがたい(どんなに正しくても、そういうときもある)ものだと察知した彼女は、次の行動にでた。

彼女の口はあくびを微笑みへとかたちを変えていった。「ああ、そうね。すごいじゃない、まあ。中に入ったら」と彼女は言った。「今コーヒーを入れるから、それでお祝いしましょう。いいえ。すぐ服を着替えるわ。そしてどこかでランチをごちそうしてあげる」

完璧どころか、それ以上だ。相手の(しかも不躾な訪問者の)心情を察知したうえ、言葉だけでなく実際の行動でそれを満たしてあげるなんて。恋愛といえど、基本は人間関係。相手の気持ちを満たしてあげることができれば、確実にモテにつながることでしょう。やはり、天使か。

いかがでしょうか?
ホリー・ゴライトリーは悪魔か、天使か。実際のところすべてを読み解いてしまえば、彼女は間違いなく悪魔的な女性なのですが、そこには今は目をつぶって。彼女が人々の注目を引きつけてやまない女性だった理由が、少しでも伝われば幸いです。押しと引きのテクニック、天使と悪魔、両面の顔を持った彼女はまさに天性の小悪魔モテ女。全貌は、ぜひあなたの目でたしかめて。

text:Ray Suenaga

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